弊社は司法書士法人を母体にしております。グループには弊社のほかに、土地家屋調査士、行政書士、一般社団法人などの法人を抱え、さらに「相続手続パートナー」の名称で相続手続業務をご依頼いただいています。
一般社団法人というのは、高齢の方向けに見守りサービスや駆けつけサービスをご提供し、ご病気で入院なさったり或いは施設にご入居なさる場合に身元保証人を引き受ける、或いはお亡くなりになったときに生じる死亡の届出や葬儀をはじめとする様々なお手続きを代行するといった業務もお任せいただいています。
こうしたサービスをご用命いただく際に、不動産をお持ちの方の中には「生前に処分を済ませておきたい。」とご希望される方がいらっしゃいます。そうした場合に、弊社が売却のお手伝いをすることもよくあるのです。

さて今回のお話も、そうしたお客様からのご依頼でした。この方は女性で年齢は80歳を超えておられましたが、残念なことに半身が不随の状態になってしまわれましたので、施設に入居を決めた方でした。お身内の方がいないわけではありませんが、事情があって頼りにすることもかなわず、一般社団法人に身元保証人をご依頼なさっていたのです。それなりに資産はお持ちだったのですが、その中に難しい物件が含まれていました。

販売するには難しい別荘地

この方が働き盛りだった昭和40年代は、経済成長の時流に乗って不動産取引が活発な時代でした。それはいいのですが、実はこの方が購入したのは北関東所在の別荘地の一画だったのです。この時代の別荘地分譲というのは規制がゆるかったこともあって、何も知らない一般の人を相手に、生活関連設備(電気、ガス、水道)も開通していないような物件を売りつけるという商法が横行していました。
お客様に購入当時のいきさつをお伺いしたところ、「営業マンの語りに乗って購入してしまった。現地には行ったことがあるが、大宮から高速道路で2時間半もかかるような場所だった。現地がどうなっているかは分からない。」ということでした。お客様のご意向は「このあと使うこともないし、持っているだけでも負担に感じる。早く手放したい。」ということでしたので、まずは現地を見に行きました。

予想はしていましたが、別荘地をうたっておきながら現地に建物は見当たりません。周辺は山ですし、原野と呼ぶのがふさわしい状態です。形ばかりの水道管がひいてありますが、ほかの電気・ガス・電話などはありません。周辺には農家が点在しているくらいで人影は見えません。この土地を買いたいという方が想像できず、頭を抱えてしまいました。

ところが、です。この物件は、わずかひと月ほどで成約できたのです。

まずは情報収集

このような別荘地は、ほかにも購入なさった方が多いせいか、売りに出ている物件が結構ありました。こういう状況ではチラシをまこうがインターネットで物件情報を公開しようが、問い合わせはほぼないでしょう。そこで戦略を切り替え、まずは近隣の不動産業者の店舗を回って情報収集から始めることにしたのです。やみくもに売ることばかり考えず、まずは地元の取引事情を把握しようというわけです。
そんな中で、たまたま7年の付き合いになる業者さんがいましたので、ご挨拶もかねて訪問してみました。よもやま話のあとで本件のことを切り出してみたところ、「そういうことならウチで引き取ってもいいよ。ただし値段はこちらの希望でお願いするけれど。」
というのです。こういうときには間を置かず話に乗るべきなので、さっそくお客様に連絡を入れました。

売り手、買い手双方満足

最終的にこの物件は、少額の売買代金を業者さんがお客様に支払い、「向こう10年間の草刈り代」として売買代金の数倍(といっても10万円前後です。)をお客様から買主の業者さんにお支払いすることで合意ができました。実際の取引では、お客様が施設から外出することが難しいため契約書を持ちまわる必要が生じたり、権利証をなくしたため所定の手続きを踏むなどの手間はかかりましたが、それでも初回面談から半年もたたないうちに取引を終えることができました。
「こんなに早く話が済むとは思いませんでした。本当にありがとうございました。」と言ってくださったお客様の笑顔を見て、お役に立ててよかったと心から思うことができました。